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2014/03/26

NO.891 貸切バス運賃・料金制度ワーキンググループのとりまとめ

貸切バス運賃・料金制度ワーキンググループのとりまとめ~合理的で実効性のある運賃・料金制度の構築について~




平成25年4月に公表した「高速・貸切バスの安全・安心回復プラン」において平成26年度初めから実施することとされた貸切バスの新たな運賃・料金制度については、その後、「貸切バス運賃・料金制度ワーキンググループ」において制度の詳細設計についての検討を進めてきました。今般、その検討結果を別添のとおりとりまとめましたのでお知らせいたします。なお、これを受けて、各地方運輸局等において、管内の運賃・料金額(変更命令の審査を必要としない範囲)を公示しますので、参考までにお知らせいたします。




Ⅰ.はじめに





本ワーキンググループでは、平成24年度に計7回の会合を開催し、高速ツアーバス事故で浮き彫りとなった貸切バス市場の構造的な問題のうち、運賃・料金制度をめぐる問題点について抜本的な改善を図るべく、その現状と課題を分析し、それらを踏まえた具体的な対応策を検討した。その検討結果に基づき、貸切バスの運賃に安全コストを計上すべきであること、合理的でわかりやすい時間・キロ併用制運賃方式へ移行すべきこと等を盛り込んだ報告書をとりまとめた上で、これを平成25年3月29日に開催された「バス事業のあり方検討会」に報告したところである。


この新たな運賃・料金制度については、同年4月2日に国土交通省が公表した「高速バス・貸切バスの安全・安心回復プラン」により平成26年度初めから実施することとされた。旧制度からの移行にあたっては、制度の詳細を確定するとともに、最新の原価に基づく審査不要運賃に係る基準額の算定方法の検討や、そのように算定された基準額について検証を行うこと等が必要と考えられることから、本ワーキンググループでは、25年度に計3回の会合を開催して、新たな運賃・料金制度の詳細設計、審査不要運賃に係る具体的な基準額の算定、運送申込者との取引の適正化を図るための個別課題に関する検討等を行い、その結果を以下の通りとりまとめた。





Ⅱ.新たな運賃・料金制度について




1.時間・キロ併用制運賃の基礎となる時間・キロ賃率の算出
(1) 標準能率事業者の選定及び要素別原価の算定
時間・キロ賃率算出の基礎とする標準的な原価を算定するためには、各地方運輸局及び沖縄総合事務局(以下、「地方運輸局等」という。)の管轄区域を単位として定められている区域(以下「運賃ブロック」という。)ごとに、貸切バス事業の標準的経営を行っている事業者(以下「標準能率事業者」という。)の要素別原価を算定する必要がある。


このため、貸切バス運賃について認可制度がとられていた平成3年の運賃改定時の選定基準である「一般貸切旅客自動車運送事業の運賃改定要否の検討基準」に準じた基準により選定することとした。


ⅰ) 標準能率事業者の選定
標準能率事業者は、当該基準に基づき、以下の①から④に該当する貸切バス事業者を除いた上で、

① 安全運行に欠ける事業者
② 直近年度において譲渡譲受、合併、長期労働争議があった事業者
③ 兼業部門の営業収入に対する貸切バス事業収入が50%未満の事業者
④ 保有車両数5両以下の事業者


 残る事業者の中から、一般貸切旅客自動車運送事業輸送実績報告書を基に、実働率及び実働日車営業収入を算定した上で、


以下の⑤および⑥の考え方により標準能率事業者を選定した。


⑤ 実働率及び実働日車営業収入が、ともに運賃ブロックごとの平均値を上回る事業者を選定した。一方で、大都市圏における費用水準の違いを検証するため、関東、中部、近畿、九州の各運賃ブロックにおいては都府県ごとに平均値を上回
る事業者を選定した。
⑥ 実働率が95%以上または実働日車営業収入が概ね12万円を超える貸切バス事業者は、学校・企業送迎専業、ツアーバス専業等特殊な輸送形態が多いと考えられるため、除くこととした。


ⅱ) 要素別原価の算定
 ⅰ)により選定した標準能率事業者155者から平成24年度実績に基づく収支報告を求め、これを基に要素別原価を集計した。なお、別に日本バス協会に収支状況報告をしている貸切バス事業者(209者)を参考調査事業者として、その乗務時間等のデータを活用した。


(2) 標準能率事業者の要素別原価の平年度推計等
 標準能率事業者の要素別原価は、平成24年度実績を基に算定しており、これを新たな運賃・料金制度に移行する平成26年度の原価水準とする必要があるため、「主要経済指標(平成26年1月24日閣議決定)」の物件費・人件費の伸び率(以下「デフレーター」という。)を乗じて平年度の原価推計とした。なお、燃料油脂費については、公益社団法人日本バス協会(以下「日本バス協会」という。)調査による軽油価格傾向値を基に、最近の軽油価格上昇率を乗じて平年度の原価推計とした。


(3) 人件費の見直し
 貸切バス事業の規制緩和後の実勢運賃の下落による貸切バス事業者の厳しい経営状況を反映して、運転者の平均賃金は全職種のそれに比べて、かなり低い水準に落ち込んでいる。このため、現状の賃金水準のみを前提として運賃額を算出した場合、賃金の下落傾向が固定化し、運転手の人材確保がさらに困難となることが懸念される。

 そこで、本ワーキンググループでは、厚生労働省が公表している賃金構造基本統計調査(平成24年)の全職種平均給与月額を人件費の積算基礎となる簿価とするとともに、全職種平均給与月額に標準能率事業者の要素別原価から算出した平均給与月額との差の1/2を加えた額を用いることとし、これらにより、人件費を積算することとし
た。


(4) 車両償却費の見直し
 貸切バスの安全運行を担保するためには、低年式車両の更新期間を短縮させることが必要であるが、現状の運賃水準を前提とした収支構造の下では、車両更新に支障が生じているとの指摘があり、本ワーキンググループによる検証においても、標準能率事業者の車両平均使用年数が大型車で13年以上である運賃ブロックが大半を占めるなどの実態を確認した。このため、現状の水準による減価償却費では車両更新の促進が困難であることを踏まえ、各自動車メーカーの新車車両価格(日本バス協会の調査による価格)の平均額を減価償却の積算基礎となる簿価とするとともに、耐用年数(5年)に、標準能率事業者の車両使用平均年数と法定耐用年数との差の1/2を加えた年数を用いることとし、これらにより減価償却費を積算することとした。


(5) 安全コストの算出
 安全対策への投資を継続的に行うことは、貸切バスの安全運行を確保する上で、最大の前提とすべきことを踏まえ、日本バス協会の貸切バス安全性評価認定の取得に要する経費、先進安全自動車の購入、デジタル式運行記録計の導入、ドライブレコーダーの導入、事故防止コンサルティングの実施等に要する経費を安全コストとして原価に盛り込むこととした。そのような安全コストについて、貸切バス安全性評価認定事業者における平成24年度から平成26年度までの実績額と計画額に係る単年度ベースの平均値を時間経費に算入することとした。


(6) 運賃ブロックの見直し
 大都市圏(東京都、愛知県、大阪府及び福岡県)を有する運賃ブロックについて、当該ブロック内における大都市圏とそれ以外の地域の原価水準の違いを検証するため、関東、中部、近畿及び九州の各運賃ブロックにおいて、都府県ごとに要素別原価を算定・検証したが、時間あたり原価、キロあたり原価ともにブロック内で区分する必要があるほどの乖離はみられなかった。このため、本ワーキンググループとしては、地方運輸局等毎の運賃ブロックをそのまま維持することとした。




2.新たな料金のあり方
 新たな運賃制度では、時間・距離別に、それぞれの賃率を実際の運行に係る時間・距離に乗じ、両者を合算して運賃額を算定することとした。その結果、従前の制度では料金とされていたものについて今後は運賃に包含することが適当であると考えられる部分もある。このため、新たな運賃・料金の標準適用方法を定める際には、料金については以下の種類に限定することとした。


① 深夜早朝運行料金
② 特殊車両割増料金
③ 交替運転者配置料金


 なお、交替運転者配置料金は人件費相当額とみなすべきであることから、基準となる料金の下限額と上限額を公示することが適当である。一方で、以下の料金は時間・キロ併用制運賃に包含されるため、廃止することとし
た。


① 待機料金
② 回送料金
③ 航送料金


 また、フェリーボートを利用した場合の航送時間の扱いについては、8時間以上の航送時間は原則として休息時間として扱われることを踏まえ、8時間を限度として、時間運賃の対象となる運行時間として算定を行うこととすべきである。





Ⅲ.新たな運賃・料金制度への移行に伴う措置について



(1) 新たな運賃・料金制度の実施
 国土交通省は、Ⅱで示した考え方をもとに、審査対象とならない運賃・料金の上限額及び下限額(以下「公示運賃・料金」という。)を速やかに公示すべきである。また、新たな運賃・料金制度の実施は、消費税率が改定される平成26年4月1日に行うことが適切である。なお、6月30日までの3ヶ月間を移行期間として位置付け、貸切バス事業者におい
て新たな運賃・料金の届出を行うよう指導すべきである。


(2) 年間契約
 概ね年間を通じて貸切バスを発注者の専属車両として運送する契約(以下「年間契約」という。)を締結する場合は、公示運賃・料金をもとに一日あたりの運賃額を算出し、当該運賃ブロックの平均実働率及び当該事業者の実績実働率との間の実働率により、年間運賃額の算出を行うべきである。年間契約の運賃・料金に係る届出において、年間運賃額が上記方法によって算出されている場合、国土交通省は審査を弾力的に行うべきである。


(3) 経過措置
 新たな運賃・料金制度への移行に際し、旅行業者等との既契約分や、入札制による価格決定方式を採用している地方自治体との契約の扱いについては、以下の経過措置により対応するべきである。

① 新たな運賃・料金の届出に際し、貸切バス事業者が当該運賃・料金の適用を開始する実施予定日として、届出書に記載される日までに、締結された契約に基づく運賃・料金については、従前どおりの扱いとすること。

② 旧運賃・料金を適用した場合には、運送引受書の備考欄に旧運賃・料金を適用した旨を記載すること


(4) 新たな運賃・料金の届出を行わない貸切バス事業者への措置
 新たな運賃・料金の公示に伴って、従前の届出運賃は、道路運送法第9条の2第2号で準用する法第9条第6項各号に該当する場合があり得ると考えられることから、新たな運賃・料金の届出を行わない事業者に対しては、原価計算書の提出を求めて審査を行い、必要に応じて運賃料金の変更命令を発動することとすべきである。

 この場合、新たな運賃・料金の公示後、3ヶ月の届出手続期間が経過した時点から、未届出事業者に対して、道路運送法第94条第1項の規定に基づき、運賃・料金の適用方の報告を求め、公示した適用方法と異なる場合については、原価計算書等の提出も求めさせることとすべきである。また、未報告事業者については、道路運送法第94条第3項に基づく立入検査の実施を行うことを検討すべきである。


(5) 処分基準の強化
 貸切バス事業者と旅行業者等の運送申込者との間で健全な取引関係を確立し、新たな運賃・料金制度の確実な遵守を確保するため、書面取引の徹底を図ることともに運賃届出違反の貸切バス事業者に対する道路運送法の処分基準を強化すべきである。





Ⅳ.運送申込者による安全阻害行為が疑われる場合の対応について



(1) 観光庁との連携強化
 貸切バス事業者による違反行為に旅行業者等の関与が疑われる場合の関係機関の通報制度において、貸切バス事業者の運賃・料金の届出違反について、運送申込書等から旅行業者が当該違反に関与していると疑われる場合に通知することと見直すべきである。


(2) 地方自治体の入札に対する対応
 貸切バス事業者による運賃料金届出違反行為に関し、地方自治体等が行う入札制により審査不要運賃の下限を下回る運賃で落札を行っていた場合、必要に応じて入札による価格決定を実施した地方自治体に対し、地方自治法第245条の4の規定に基づく、地方自治体の入札等について改善を求める技術的助言を行うこととすべきである。


(3) 再発防止が困難であると認められる場合の対応
 上記の措置のみでは、再発防止が困難であると認められる場合には、貨物自動車運送事業法における「荷主勧告制度」を参考としつつ、新たな制度の導入について、道路運送法の改正の機会を捉えて、具体的な検討を進めていくこととする。





Ⅴ.発注者、利用者への周知について




 安全性の確保の必要性を踏まえた新たな運賃・料金制度について、発注者や利用者に理解してもらうことを目的として、貸切バス事業者、旅行業者に対する周知を図るとともに、入札制による価格決定方式を採用している地方自治体や教育委員会に対しても丁寧に周知を図るべきである。

 このため、「輸送の安全を確保するための貸切バス選定・利用ガイドライン」を改訂し、入札等を行う場合にあっては、新たな運賃・料金制度の趣旨、これらに基づく公示運賃の算定方法について、適切に説明するとともに、入札額と応札者の届出運賃の確認や、応札者から国税及び地方税の納税証明書の提出等を促すよう慫慂することにより、安全性確保のために法令遵守等に努めている貸切バス事業者が応札しやすい環境づくりを推進するべきである。






Ⅵ.おわりに




 新たな運賃・料金制度への移行後、新制度による収支状況等について、本ワーキンググループにおいて適宜フォローアップを行い、貸切バス事業の経営環境の健全化や、貸切バスサービスの安全・安心に対する信頼回復を引き続き進めていくこととする。
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